『過去の研究報告によれば、カルシウムの摂取が多い人では脳卒中や認知症が少ないことが示されています。』とのことです。 |
カルシウムは、生体内で最も多いミネラル成分です。その99%は骨に存在することから、骨折の予防に重要な栄養素といえそうです。また、過去の研究報告によれば、カルシウムの摂取が多い人では脳卒中や認知症が少ないことが示されています。
カルシウムの摂取量と、高齢者の日常生活動作の関連性を検討した研究論文が、日本疫学会誌の電子版に2020年2月8日付で掲載されました。日常生活動作とは、着替え、食事、排せつ、入浴、屋内での歩行など、日常生活を送るために必要な最低限の動作のことです。
この研究では、日本に在住している65歳以上の高齢者264人(平均69・5歳、女性55・3%)が対象となっています。研究結果に影響を与えうる年齢、体格指数(BMI)、喫煙・飲酒状況などの因子について、統計的に補正を行いました。解析の結果、日常生活動作が障害されるリスクは、1日のカルシウムの摂取量が476ミリグラム未満の人と比較して、476~606ミリグラムで28%、607ミリグラム以上の人で56%、統計的にも有意に低下しました。
【日刊ゲンダイ ヘルスケア 配信】
記事は
さらに次のように続いています。
『カルシウムを意識的に摂取している人はバランスの良い食習慣に配慮している可能性があり、もともと健康的な集団だったのかもしれません。したがって、カルシウムの摂取が直接的に障害を予防しているかどうかは不明です。』
『他方でカルシウムの過量摂取は、高カルシウム血症などの副作用をもたらすこともあり注意が必要です。カルシウムをサプリメントで摂取するのではなく、魚や乳製品などをバランスよく食べることがすすめられます。 』
少し気になったので、
まずカルシウムと脳卒中の関係から調べてみました。
公開されているデータを見てみますと次のような記事がありました。
『JACCスタディは、「The Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk」の略で、全国45地区の住民を対象に現在も継続して行われている文部科学省の研究費による研究です。私たちは、研究が開始された1988~1990年時点で40~79歳だった男女53,387人を9.6年間追跡調査し、その結果を2006年に発表しました。』
『食物摂取頻度調査票を使って栄養調査を行い、乳製品からのカルシウム摂取量で5分位に分け、摂取量が最も多い群と最も少ない群の相対危険度を求めました。その結果、男性では乳製品からのカルシウム摂取量最も多い群(中央値:150mg/日)では、最も少ない群(同0mg/日)に比べて、全脳卒中による死亡リスクが0.53倍、脳梗塞による死亡リスクも0.53倍でした。女性でも同様に、全脳卒中による死亡リスクは0.57倍、脳梗塞による死亡リスクは0.50倍と、死亡リスクの低下が見られました。』
その理由として
「カルシウム(Ca)摂取不足と脳卒中の関係」が示されていました。
つまり「Ca摂取不足」→「副甲状腺ホルモンの分泌過剰」→「骨破壊亢進による血中Ca濃度の上昇」という関係が指摘され、そこからさらに3つに分岐していきます。
一つ目は「骨破壊亢進による血中Ca濃度の上昇」→「血管収縮」→「血圧上昇」→「脳卒中」という関係です。
二つ目は
「骨破壊亢進による血中Ca濃度の上昇」→「血小板内Ca濃度上昇」→「血小板凝集能の亢進」→「脳卒中」という関係です。
三つ目は「骨破壊亢進による血中Ca濃度の上昇」→「動脈へのCa沈着」→「脳卒中」という関係です。
次に
カルシウムと認知症との関係を調べてみました。
公開されているデータに次のような記事がありました。
『認知症の一歩手前の軽度認知障害から認知症の一つのアルツハイマー病に進んだ人は、進まなかった人に比べて血液中のカルシウム濃度が低かったとの研究結果を、東京大講師の岩田淳さんらが発表した。』
『認知症予防に効果があると言われる適切な食事や運動は、カルシウム濃度を高める働きもある。岩田さんは「乳製品を取り入れた食事や適度な運動など、認知症になりにくい生活習慣を勧めることを後押しする結果が出た」と話している。』
つまり
脳卒中での記事同様、『慢性的にカルシウムが不足している状態が続くと、副甲状腺ホルモンを出す指令が頻繁に出て、骨からカルシウムが過剰に溶け出し、それに伴って、血液中のカルシウムが血管壁や脳、軟骨、免疫細胞などに入り込むが、脳細胞の中にカルシウムが入り込むと、脳細胞の働きが悪くなり、記憶をつかさどる細胞が傷つけられ、認知症やアルツハイマー病を発症させる原因になる。』というプロセスになるようです。
牛乳の摂取につきましては昔から賛否両論あるところですが、それらを見比べた結果、私としては『乳製品からのカルシウム摂取量を1日180~200mg程度、つまり牛乳なら1本(200ml)、ヨーグルトなら2カップ(180g)、スライスチーズなら2枚(30g)程度』なら、積極的に摂取した方が良いように見受けられました。
やはり
「不足あれば支障あり」、「過ぎれば及ばず」ということに尽きるようです。
「適量を積極的に摂取する」ということが、微妙なバランスを保つ上での秘訣と言えるのかも知れませんね。