生まれつき耳の聞こえなかった1歳3カ月の女の子が人工内耳の手術を受け、初めて聞く音に驚く瞬間の映像が公開されています。 |
生まれつき耳の聞こえなかった1歳3カ月の女の子が人工内耳の手術を受け、初めて聞く音に驚く瞬間の映像が公開された。
アデジャ・リバースちゃんはジョンズ・ホプキンス大学付属の小児病院で、人工内耳を埋め込む手術を受けた。
同病院の聴覚訓練士によると、術後はごく弱い電流の刺激から始めることになっている。本人には最初「ピー、ピー」という音だけが聞こえるという。続いて、母のパトリシアさんが優しく「アイ・ラブ・ユー」と語り掛けた。
アデジャちゃんは目を丸くして驚き、パトリシアさんの声にぼう然としたような表情を見せた。
パトリシアさんは地元のCNN系列局に「とても嬉しい」と話した。
アデジャちゃんの父と姉も聴覚障害を持つ。姉が人工内耳の手術で聞こえるようになった後、一家はアデジャちゃんにも手術を受けさせることを決めた。
アデジャちゃんの通院中は毎回、家族みんながそろいのTシャツ姿で付き添ったという。
手術を受けた時期が早いため、アデジャちゃんの言葉の遅れはごく軽度にとどまる見通しだ。
人工内耳はマイクで音を拾って電気信号に変換し、それを内耳に埋め込んだ電極から聴覚神経に伝える機器。埋め込み手術は1歳から可能とされる。
【CNN.co.jp 配信】
人工内耳と聞くと
一瞬「人工の鼓膜を埋め込むのだろうか」と思いがちですが、そうではないようです。
耳の構造を簡単にまとめますと、まず大きく外耳・中耳・内耳と分かれ、外耳とは耳介(一般的には耳たぶと呼ばれている)から鼓膜の手前までの範囲を示す言葉で、音を集めて鼓膜まで伝える役割を果たしているそうです。
次に中耳とは鼓膜や耳小骨など蝸牛の手前までの範囲を示す言葉で、音を増幅する役割を果たし、最後に内耳とは蝸牛や有毛細胞、蝸牛神経などの範囲を示す言葉で、音の振動を電気信号に変換する役割を果たしているそうです。
更に
それらの役割を細かく見ていくと、次のようになるそうです。
- 耳介:空気の振動を集める
- 鼓膜:空気の振動をキャッチ
- 耳小骨:振動を増幅する
- 蝸牛:中のリンパ液が振動
- 有毛細胞:リンパ液の振動により刺激を受けて、その刺激を電気信号に変える
- 蝸牛神経:電気信号が、蝸牛の中の神経細胞から蝸牛神経を通って、脳に伝わる
そして
人工内耳とは、「皮膚の下に埋め込まれた受信装置から、電極が中耳を通って蝸牛に入る」仕組みのことで、受信装置は送信コイルと磁石でくっついているとのことです。
送信コイルは体外装置の一部で、この装置はマイク(音を集める)、スピーチプロセッサー(電気信号に変換)、ケーブル、送信コイルから構成されているそうです。
つまり
補聴器のようなマイクで集音し、電気信号に変換し、それを送信コイルが皮膚の下の受信装置に届けて、さらに蝸牛神経に渡されることで最終的に音が認識できるようになるという仕組みのようです。
この人工内耳手術の適応基準の詳細は、1998年4月に日本耳鼻咽喉科学会から示されており、成人に対する適応基準では、90デシベル(dB)以上の高度難聴で、補聴器装用効果が乏しいものとされているとのことです。
ちなみに
正常な聴こえだと20 dBHL 程度の小さな音も聞こえますが、聴力レベルが25~39 dBHL(騒がしい環境での会話の聴き取りが難しい)は軽度難聴に分類され、聴力レベルが40~69 dBHL(補聴器を装用しないと、会話の聴き取りが難しい)は中等度難聴、聴力レベルが70~89 dBHL(高出力補聴器の装用が必要)は高度難聴、90 dBHL以上(読唇や手話を使うか、人工内耳の装用が必要)は重度難聴に各々分類されるそうです。
人工内耳の手術は耳の後ろ(耳介部)を5~6㎝切って内耳に埋め込まれる電極を含めた内部機器を設置する手術となり、全身麻酔をかけて行われるそうです。
手術そのものは2~3時間程度で、一般には翌日から普通に動け、通常の入院期間は2~4週間くらいだそうです。
人工内耳手術の総費用は
約400万円と言われていますが、そこから健康保険によってカバーされる範囲や、高額療養費制度や心身障害者(児)医療費などの助成によってカバーされる範囲を除外した最終的な自己負担額は数万円~十数万円ぐらいとも言われています。
現在補聴器を使用している人の中には「いっそのこと手術で人工内耳にすれば補聴器がいらなくなるのでは」と思った人もいるかも知れませんが、まだ補聴器で聞こえるだけでも幸せだということに気付かされたのではないでしょうか。
アメリカ合衆国の思想家で哲学者のラルフ・ワルド・エマーソンという人が、「健康は第一の富である」という言葉を残していますが、正にその通りで、多少の問題があっても今の健康に感謝すべきなのかも知れませんね。