上空10万キロに設けた宇宙ステーションと地上をケーブルでつなぎ、何両にも連なった昇降機で往来することを考えているそうです。 |
『宇宙エレベーターに挑む 総工費10兆円「理論上可能」』
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長さ30センチほどの鉄製の昇降機が、するするとケーブルを上っていく。その高さは約100メートル。2016年にドイツ・ミュンヘンであった実験は、壮大な構想への、ささやかな一歩を刻んだ。
関係者が実験の先に見据えるのは「宇宙エレベーター」だ。上空10万キロに設けた宇宙ステーションと地上をケーブルでつなぎ、何両にも連なった昇降機で往来する。
「現代のバベルの塔」。そう称される構想の実現に、日本大学理工学部(千葉県船橋市)の青木義男教授(60)=安全設計工学=が挑んでいる。
「エレベーターで宇宙に行けるはずがない」。青木教授は最初、そう思った。ビルのエレベーターの安全管理や事故調査を研究していた08年のことだ。でも、米航空宇宙局(NASA)が技術競技会を開いていると知り、考えが変わった。「できないじゃなくて、挑戦してみよう」
翌年、クライマーと呼ばれる昇降機を試作した。13年に富士山麓で行った実験では、地上1200メートルに到達した。
次に挑むのが宇宙空間での実験だ。10立方センチの衛星を二つ放出し、衛星間にケーブルを渡す。その間をクライマーが行き来する。うまくいけば18年度中にも実施する。
【朝日新聞デジタル 配信】
惑星などの
表面から静止軌道以上まで伸びる軌道を持つエレベーターのことを「軌道エレベーター」、あるいは「宇宙エレベーター」と呼ぶそうです。
宇宙空間への進出手段として構想されているもので、カーボンナノチューブの発見後、現状の技術レベルでも手の届きそうな範囲にあるため、実現に向けた研究プロジェクトが日本やアメリカで始まっているとのことです。
カーボンナノチューブ
というのは、鋼鉄の数十倍の強さを持ち、いくら曲げても折れないほどしなやかで、薬品や高熱にも耐え、銀よりも電気を、ダイヤモンドよりも熱をよく伝える性質をもった驚異の新素材といわれています。
1990年に炭素原子60個で構成されるサッカーボール状の構造を持ったC60フラーレンの大量合成法が発見されました。
これは、
炭素電極をアーク放電によって蒸発させると、陽極側にたまった「すす」にC60が大量に含まれているというもので、各国の研究所がフル稼動でフラーレンを生産しようと躍起になっていたころ、世界でたったひとりだけ「陰極側」のすすを観察していた人物がいました。
その人がNEC基礎研究所の飯島澄男主席研究員(現在名城大教授兼任)で、博士がフラーレンを観察しようと陰極にたまったすすを電子顕微鏡にかけてみたところ、球状のフラーレンとは全く違う、からみ合った細長いチューブ状のものがたくさん観察され、それが驚異の新素材「カーボンナノチューブ」だったとのことです。
驚異の素材なので
遠くまで伸ばしても劣化しないため、、それをケーブルに用いることでエレベーターができるということのようですが、ただ、今のところ長く伸ばす技術がないなど、課題は山積みのようです。
それにしても地上から10万キロに設けた宇宙ステーションまで、エレベーターで行き来するとは何という発想でしょうか。
現段階では、宇宙ステーションに行くことができるのは、かなりの期間訓練を重ねた宇宙飛行士だけですが、今後は民間機による一般人の宇宙旅行も計画されるなど、次第に通常の旅行と同じようになるものと思われます。
そして
宇宙エレベーターの登場によって、その傾向はますます強まり、人類は次第に、地球規模の活動から太陽系惑星間規模の活動へと、活動範囲を広げていくことになりそうです。
今回の報道は、一つの素材の発見がとてつもない応用へとつながる一つの例を示したものといえますが、今後も素晴らしい発見が行われ、それが人々の生活をより豊かにすることを期待したいと思います。