ips細胞1個から血管内皮細胞を11個など、高収量で作製できたそうです。
『成長率99%、iPSで血管内皮細胞 京大CiRA山下教授「高収量、重要な成果」』
ヒト由来の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から血管内部の「血管内皮細胞」を効率的に作製する技術を開発したと、京都大iPS細胞研究所(CiRA(サイラ))の山下潤教授らの研究チームが、13日付の米オンライン科学誌「プロスワン」で発表した。
(略)
研究チームによると、iPS細胞に刺激を与えて血管内皮細胞へ分化させる作業過程で、刺激を与えて5~6日目でも分化への反応がない細胞を取り除くと、残った細胞の約99%が血管内皮細胞へ成長した。従来の作業では、この反応がない細胞を取り除いておらず、血管内皮細胞に成長するのは最大で約70%にとどまっていた。
【産経WEST 配信】
京都大では、この2月に、
山水康平特定拠点助教(血管細胞生物学)らの研究グループも、ヒトのips細胞から、脳の血管内皮細胞を作ることに成功しています。(朝日新聞DIGITALの記事より)
この血管内皮細胞とは血管の内側にある一層の細胞のことで、血管作動物質の放出、血管中膜内の平滑筋の調節、血小板の粘着・凝集の抑制、などの働きがあるといわれています。
血管は動脈・静脈ともに、
内膜、中膜、外膜の三層構造となっており、この内膜が、一層の血管内皮細胞で覆われているとのことです。中膜は血管壁の収縮や拡張の運動を支える筋肉でできており、外膜は血管壁を外部から守る働きがあるそうです。
ちなみに動脈硬化というのは、この血管内膜にある一層の内皮細胞の機能が低下し、隙間からコレステロールが入り込むことによって始まるとのことです。
血管系の病気には、
この動脈硬化の他にも、高血圧、狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈、脳梗塞、クモ膜下出血、脳出血、動脈瘤など、いろいろありますが、血管内皮細胞を効率的に作ることができれば、これらの病気のメカニズムの解明や、新しい治療薬の開発に、大いに役立つものと思われます。
京都大学山中教授が、世界初のヒト人工多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)の作製に成功したことを受けて、2008年(平成20年)に、総合科学技術会議の下に、iPS細胞研究ワーキング・グループが設置され、以下の検討がなされたとのことです。
- 包括的なiPS細胞研究の進め方、研究体制の整備について
- 研究の進捗状況に応じて、臨床研究の指針等のガイドライン類の整備に向けた各省調整について
- iPS細胞研究に関連した知的財産の保護とその支援方策について
- iPS細胞関連研究の国際動向について
日本は資源の少ない国ですが、
技術力の高い国といわれています。このips細胞に基づく研究体制と研究成果を、より大きなものに育て上げ、たくさんの若い人達の生きがいと雇用を確保することで、医学立国を目指して邁進して欲しいと思います。
そのためには、医師会や医薬品メーカーに任せるだけではなく、日本の国家戦略としての地図を描き、オール日本での医学立国化を推進すべきだと思います。
医療分野の裾野は広く、
医療需要の増大に伴い、製薬会社や研究機関を中心に、医療機器製造会社、薬品材料生産会社、大病院、専門病院、各種検査機関、医療関係の学校、リハビリ施設、交通機関、宿泊施設など、とてつもない産業や施設への需要波及効果が期待できます。
「医学立国は、日本にとっての大きな希望」といっても、決していい過ぎではないと思います。