新医学部のスタートが切られたようです。
【37年ぶり新医学部で入学式 仙台、復興支援へ医師育成】
東日本大震災の復興支援として、37年ぶりに医学部新設が認められた東北医科薬科大の入学式が5日、仙台市の電力ホールで開かれた。東北地方の医師不足解消に向け、100人が災害時や過疎地で役立つ医療を学ぶ。
新医学部生の内訳は、東北各県の医療機関に一定期間勤務することで奨学金の返還が免除される「修学資金枠」55人と「一般枠」45人。
医学部の新設は1979年の琉球大以来で、文部科学相が昨年8月に認可。大学は今月、東北薬科大から東北医科薬科大に改称した。(産経ニュース 配信)
医学部新設が認められたのは、
東日本大震災により病院の施設に大きな打撃を受けたことで、この地の地域医療従事者を減らすことになり、その対応策としての判断があったようです。
元々地方勤務の医師の待遇は都市部に比べて改善すべき点が多いという指摘がありましたが、震災がこの問題をさらに加速させたことで対応に迫られたということでしょうか。
日本の医師数は
OECDの平均に較べると2/3ほどといわれていますが、EUでは医師の1週間の勤務時間が一定時間(47時間など)に制限されているというような事情もあるようで、単純に比較するには問題がありそうです。
日本医療法人協会や全日本病院協会などの地域医療の現場は医師不足を実感して増員を訴えているのに対して、日本医師会や大学病院は増員に反対しているという構造があるようです。
増員反対の理由としては
医学部が新設されると病院勤務医を教員に振り替える必要があり、教員として引き抜かれれば地域の医療機関から多くの医師の移動がおこり、結果として地域の医師不足を加速させる懸念があるためという指摘があります。
この指摘については、問題となるのは臨床医学の教員のみであり、開学当初の教員が当地の医師だけで構成されることはなく、日本全国から集められるのが一般的であるので、必ずしも当たらないという考え方もあるようです。
また学部によっては定員増のために、入学者が定員割れすることで、質の低下につながる懸念があるという指摘もみられますが、この指摘も医師国家試験の合格というハードルがあることから、否定的にみる人が多いようです。
医師の数は
「年間に3,500人から4,000人ぐらいは増えている」あるいは「過去5年間に医学部定員が1366人分増えた」というデータなどもあり、問題点は医師全体の数というよりは医師の都市部への集中や特定の診療科への集中など、いわゆる偏在化にあるというのが実態のようです。
それを踏まえた上で医学部を新設し、その際併せて地域医療に貢献してもらえるような奨学金の返還免除制度を導入することで、地域医療の充実を図るべく努力しているというのが現実の対応ということでしょうか。
待遇も大事だとは思いますが、人のために尽くすことで得られる喜びは、待遇向上で得られる喜びよりも遥かに大きなものだと思います。そのような大きな志をもった医師が一人でも増えてくれば、日本はもっと「住みよい国」になるのではないでしょうか。