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グローバル(多国籍)企業と税金について調ベてみました。

米製薬企業大手の

ファイザーについての記事が公開されていました(以下に抜粋文を掲載)。

『製薬会社の利益の源泉は新薬の開発が中心で、年間売上高が10億ドルを超える主力の医薬品が売上を支えてきたが、そのためには8億ドルを上回る研究開発費が必要で、それも長期間にわたって新薬の開発に努めなければならなかった』。

『やがて新薬の開発にかかるコストの上昇と、主力医薬品特許の期限切れによる売上低下で利益率が悪化したため、新薬開発というリスクを減らし、更に開発期間の短縮を目的として、有力新薬を会社ごとに次々とM&A(買収)するようになった』。

『しかしM&Aによっても利益が確保できなくなり、次には法人税を減らすことを考え、本拠地をアイルランドに移した』。

アメリカは法人税率が35%と

先進国でも最高水準であるため、税率12.5%のアイルランドに本拠地を移すことによって、収める税額が安くなります。

これは、本拠地を外国に移して、米国企業をその子会社とすれば、海外での所得については、米国の税率ではなく、その別会社の税率が適用されるということを利用したものといわれています。

このように

「会社の本拠地を海外に移す」ことを「タックス・インバージョン(課税逆転)」というそうですが、「実質的には米国に本社機能があるのに、形式上、アイルランドに本社を移して、本来課されるべき法人税を免れた」ということで、「租税回避」ともいわれています。

かつては、アップルやグーグル、アマゾンなどの米国発祥の大手企業でも、低税率国に本社機能や知的財産権を移転することで、米国の課税を免れてきたといわれており、その意味では「租税回避」はグローバル企業にとっての節税手法の一つであった、といえるようです。

但し日本では、外国に本拠地を持つ外国法人の場合は、国内(日本支店)の所得だけが課税対象となり、外国での所得は課税対象にはならないので、事情は異なるものと思われます。

さらに、もう一つ別の方法もあるようです。

仮に、A国の法人税がすこぶる安い場合、グローバル(多国籍)企業は、A国支社から法人税の高いB国支社に商品を仕入れることにして、仕入れの価格を上げます。

そうすると、B国支社では、仕入れ値があがったため、利益が少なくなり、一方、A国支社では、B国支社への売上があがったので、利益が多くなります。

結局、利益は片方が増え、片方が減るので、企業全体でみると、利益は変わらないにも関わらず、税金の支払額が少なくなります。

ちなみに日本では、

20%以下の安い税金となっている国に会社があって、前記のような節税を行っていた場合は、その差額分を、日本に税金として支払う義務がある、という「タックスヘイブン税制」があり、それによって不正を防止しようとしていますが、この税制にも抜け道があるようです。

仮に税金が安いA国と日本で租税回避をすると、「タックスヘイブン税制」によって、税金の差額を支払う必要がありますが、そこに税金の安いB国を間に挟んで、もう一つの法人を、B国を通してA国に作ってしまうと、分かりにくくなるため、適用を免れることができるようです。

そのため、この「租税回避」には、アイルランドとオランダの名前を用いて、「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」といわれています。

このように

国の稼ぎ頭ともいえる大手企業は、グローバル市場を舞台に、税制の欠陥や抜け穴を巧みに活用して節税を行い、課税逃れを行っています。

国税の法人税と、地方税の法人住民税、法人事業税の3つを合計した法定の合計税率を「法定正味税率」(法の定める税率といわれています)といい、2014年3月期の法人の所得に対する「法定正味税率」は38.01%だそうです。

これに対し個別の企業の利潤に対する実際の納税額の負担割合を「実効税負担率」といいますが、この値が「法定正味税率」に比べて著しく低いという指摘があります。

2014年3月期の当期利益が

上位100位以内にある企業における、1期のみの試算による報告ですが、「実効税負担率」がマイナスを示す企業が4社もあり、1%に達しない極端に低い企業が10社、5%未満の企業も2社あり、比較的多くの法人税を払っている著名な企業でも20%台で、30%に達していない企業が18社あるとのことです。

この報告によりますと、資本金100億円超の大手企業の場合、その法人税等合計税額の平均負担率は、外国税額を含めても17.20%と極端に低く、「法定正味税率38.01%」の半分にも達していないのに対し、資本金1億円超~5億円以下の中堅・中小企業は37.92%を負担しており、限りなく「法定正味税率」に近いことが指摘されています。

ちなみに資本金1億円以下の法人には、中小企業に対する軽減税率(年所得800万円以下の部分は15%に軽減)が適用されているので、「法定正味税率」より低くなるとのことです。

結局、

資本金1億円超~5億円以下の中堅・中小企業は法の定める税率の税金を収め、資本金100億円超の大手企業は、法の定める税率の半分しか負担していないということが分かります。

法の定める税率を下回る要因としては、租税特別措置による政策減税(企業優遇税制といわれる)や、受取配当金益金不算入制度、外国税額控除制度などの指摘がありますが、中でも外国税額控除制度はグローバル企業に有利な要因になっており、この制度の利用によって、前記のような違いが現れているものと推察できます。

グローバル企業が

本来収めるべき税金を納めることで、さまざまな問題が緩和、あるいは解決されることを思えば、それを放置している政府も含めて、強い憤りを覚えます。

「これも全て有権者が選択したこと」という、コメンテーターの、いつもの決めゼリフが聞こえてくるようです。

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