温室効果ガスの6割を占める二酸化炭素を材料に、プラスチック原料や次世代エネルギーとなる水素やギ酸を生み出すことができるそうです。 |
水と二酸化炭素から有益な物質を生み出す「人工光合成」
光合成とは、植物が水と二酸化炭素を吸収し、太陽の光を利用して、でんぷんやブドウ糖、酸素などを作り出すというもの。これを人工的に行おうというのが「人工光合成」だ。温室効果ガスの6割を占める二酸化炭素を材料に、プラスチック原料や次世代エネルギーとなる水素やギ酸を生み出す。
水につかった白い板から出ているのは、水が分解してできた、水素と酸素が混じったガス。
これが、「人工光合成」の要、「光触媒」による水分解反応だ。
「人工光合成」は大きく分けて2段階のステップを踏む。
まず、水を水素と酸素に分解する。できた水素と二酸化炭素を合わせて、プラスチック原料に合成する。
このほかに、水素をそのまま次世代エネルギーとして使ってもいい。二酸化炭素は、工場や火力発電所などから排出されるものを利用することが想定されている。
10年で150億円の国家プロジェクト
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、複数の企業と大学が参加する人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)が一体となったこの国家プロジェクトには、総額150億円もの予算が投入され、2021年までの10年がかりで実用化に向けて開発が進められている。
【FNN PRIME 配信】
地球温暖化の
原因となっているガスには様々なものがあるとのことですが、なかでも二酸化炭素はもっとも温暖化への影響度が大きいガスと言われています。
産業革命以降、化石燃料の使用が増え、その結果、大気中の二酸化炭素の濃度も増加しており、IPCC第5次評価報告書(2014)によると、このままでは 2100年の平均気温は、温室効果ガスの排出量が最も多いシナリオに基づく場合、最大4.8℃上昇するとのことです。
日本でも
真夏には40℃近くの気温が記録されるようになってきましたが、さらに4.8℃上昇するとなると、とても活動できる範囲ではなくなります。
その意味では、地球温暖化への影響が大きいと言われる二酸化炭素を産業利用するという発想は、世界的に大変有益な発想と言えるのではないでしょうか。
具体的には、
まず水を光触媒で水素と酸素に分解し、次にその水素と二酸化炭素(この中のCOを利用)を合成触媒によりプラスチック原料(オレフィンC2、C3、C4)に変えるとのことです。
二酸化炭素の利用方法については、他にもいろいろな試みが行われているそうで、たとえばチューリヒのクライムワークス(Climeworks)社では、合成燃料の生産などを目的に、大気中のCO2を回収する技術の開発に5年前から取り組んでいるそうです。
最悪
2100年に4.8℃の気温上昇というデータがあるそうですが、その80年先をいくつかに区切って考えると、(平均計算では)20年先には1.2℃の上昇ということになり、そんなに遠い先の問題とも言えないようです。
今後の世界的な二酸化炭素の産業利用に大いに期待したいと思います。