大企業とベンチャー企業
日本のベンチャー企業が大企業となって、世界をリードする日は来るのでしょうか。
米国では既存の大企業に加えて多くのベンチャー企業が大企業となって、世界をリードしています。IT業界で言えば「マイクロソフト」、「インテル」、「オラクル」、「グーグル」など、他にもたくさんの企業が成功を収めて、今なお前進しています。
ベンチャー企業が大企業となることには
大きな意味があります。それは「新しい技術力の劇的な発展をもたらす担い手」が生まれることになるからです。既存の企業にはない、新しい発想を持った技術が世界的な広がりを持つことで、多くの人々の生活がより豊かに、可能性のあるものに変わっていきます。
これまでITにより世界の経済は大きく発展してきましたが、はたして日本のベンチャー企業は大きく羽ばたくことができたのでしょうか。「マイクロソフト」や「インテル」のような企業は生まれたのでしょうか。
答えは
極めて否定的なものとならざるを得ません。仮にそうであるとすれば、日本のどのような仕組みに問題があるのでしょうか。一番象徴的な日本の仕組みがあります。それは「企業の下請け構造」と言われる仕組みです。
新しい技術を身に付け、
それを発展させようと独立する企業家は多いと思います。しかし独立しても「なかなか仕事を依頼してもらえない」というのが現実です。日本の大企業が、そのような小さな企業と取引することを避けたがるのが、一番の要因だと思います。
一般の消費者向けの仕事の場合は、良いものを安価に提供することで、比較的成功しやすいのですが、企業向けの仕事の場合は、たとえ素晴らしい技術力をもってしても、成功には至らないことが多いと言えます。
日本の大企業には
直接ベンチャー企業に発注せず、傘下に同系の技術を扱う子会社を設立し、そこを通して仕事を発注する傾向があります。
理由は「価格を安く抑えたい」、「自分で直接発注するのは面倒」、「同程度の技術力を傘下に置いておきたい」など、色々あると思います。結局一言で言えば「ベンチャー企業を大きくしたくない」ということに尽きるといっても過言ではないと思います。
何故そう思うのかというと、
仕事を依頼したいベンチャー企業が大きくなると「価格がどんどん高く」なったり、「納期などの要求が希望通りにならなく」なったり、ITの場合だと「システムを自分で自由に変更できなく」なったりすることが予想され、そのことに不安を抱くためだと思われます。
しかし、結果的には
大企業となった外国のベンチャー企業に依頼することになります。結局、自分達の思うようにはなりません。
日本のベンチャー企業が大企業化しそこに依頼する場合は、日本語を重視したシステム化が進められるので使いやすさも良く、また要望も通りやすいと思いますが、外国企業の場合はなかなかそうはいかないでしょう。
そして何よりも致命的なのは「その技術の進化の担い手が外国企業」ということです。日本の技術者はどんどんその対象となる技術的進化から遅れていくことになります。応用するにも充分に使いこなせない事態に陥ることになります。
「餅は餅屋に任せること」です。
日本のベンチャー企業をもっと信頼して大きく育ててあげれば、結局自分達にとっても使いやすいシステムが得られる上、「自前の技術」であるから、更に進んだシステムへと変えることも容易になります。
自分の製品を買ってくれる取引会社にもなるでしょう。裾野が広がり、多方面のベンチャー企業へと可能性を伸ばすこともできます。
今は
「下請けシステム」により、何階層もの階層ができ、中間の企業はただ単に仲介しているだけで利益を得ています。たとえできが良くなくても多くの下請けを使い続けることで「いつでも代わりはいる」という圧力をかけながら均等に仕事を発注することで、下請け会社はいつまでも大きく発展することができません。
結局、
現場で仕事をしている最下層に充分な資金がいかないために、技術的研究にも余裕が無く、結果として技術力が低下し、諸外国に遅れをとることにもなります。
日本は
経済システムにおいても見直すときにきています。
ベンチャー企業が少し大きくなり利益が出るとそこからも税金を納めさせます。仮に1000万円の利益が出たとして、500万円を税金で収めるとしたら、どうやって大きくなれるでしょうか。
大企業に育つまでは優遇すべきです。また金融機関も有望な企業には担保無しで低利の長期資金を融資すべきです。そして成功した後で「預金面での協力」、「貸金面での協力」をお願いすれば良いのです。
今ベンチャー企業で、
ある程度の規模を維持している企業は「ユーザーに対する何らかの占有権を保っている企業」か、「多くの友人企業を知る人が経営する企業」だけでしょう。
良い技術力があれば大企業が直接依頼し、発注量をどんどん増やし、知り合いの会社を紹介するなどして協力すべきです。そうなればもっと多くのベンチャー企業が名乗りをあげ、どんどん技術的な進展が見られ、そのことによって結局大企業自身の選択肢も広がります。
どんなに「勤勉」で「頑張り屋」でも
救われないとしたら、何と悲しい国民なのでしょうか。
ベンチャー企業を多くの企業で応援することで日本が元気になります。そしてその効果は必ず自分達に返ってきます。どんな大企業も創業時は大変な苦労をしてきたと思いますが、その苦労とその後の成功を知る存在であればこそ、助けてあげる意味を理解できる数少ない存在とも言えるのではないでしょうか。