牛乳有害説 

牛乳が有害であるという説に関して、合理的な説明を与えることもできなければ、それを示唆するデータもないそうです。

『牛乳有害説』

⇒明治大学科学コミュニケーション研究所の記事へ 
 
※こちらの記事は削除されました。

『言説の一般的概念や通念の説明』
本項では、牛乳有害説(牛乳有害論)について評定する。牛乳有害説とは、「牛乳は人の体に悪い」という基本的な考えのもと、牛乳が人の健康に与える影響(特に“害”)について論じている言説である。

本項では一般通念として用いられる「牛乳が(人体に)有害である」という説明を俯瞰しつつ、強い主張については新谷弘実氏による著書『病気にならない生き方』にて謳われているものを中心的な対象とする。

『効果の作用機序を説明する理論の観点』
牛乳有害説の理論では、強い主張においても弱い主張においても消化吸収の問題が、その思想の根底にあるようである。そこで、ここでもまず牛乳の消化吸収における問題――具体的には乳糖不耐症(ラクターゼ欠乏症)について検討していく。

もっとも強く指摘すべき点は、乳糖不耐症であるからといって、栄養素をまったく吸収できないわけではないということだ。たとえば、カルシウムは主に小腸上部の十二指腸や空腸で吸収されるのだが、乳糖不耐症は小腸で吸収されなかった乳糖が大腸に移行して起こるものである。つまり、作用している体の器官がそれぞれで違うため、栄養素が得られないという説明になっていないことがいえる。

乳糖不耐症がカルシウムなどの栄養素の吸収を妨げているわけではなく、それらはむしろきちんと吸収されている。

『総評』
牛乳が有害であるという説に関して、合理的な説明を与えることもできなければ、それを示唆するデータもない。少なくとも骨粗鬆症における有害説の理論はほぼ完全に破綻しており、他の研究データの誤用などによって、なんとか体裁だけが支えられているという状態にあるといえる。換言すると、言説のつじつまをあわせるために研究データを引用しているのだ。

【明治大学科学コミュニケーション研究所  配信】

2005年に

新谷弘実医師の著書、「病気にならない生き方」の初版が発行され、その中に牛乳を批判する記述があったため、多くの反響を呼び、今でもその影響は少なくないようです。

それ以来、牛乳の良し悪しについて、多くの論評が見られるようになりましたが、牛乳からはタンパク質が摂取できるため、高齢者の少食による衰弱を補うなど期待する効果も大きく、どちらかといえばというレベルでもよいので、「良いのか悪いのか」を是非知りたいと思い調べてみました。

今回参考にさせていただいた記事は、『疑似科学とされるものの科学性評定サイト』として情報を発信している、「明治大学科学コミュニケーション研究所」というサイトの記事です。

詳しくはサイトを閲覧していただきたいと思いますが、ここではいくつかの記事を抜粋してお伝えしたいと思います。

牛乳有害説の理論では、

消化吸収の問題が、その思想の根底にあるようですが、これについては次のように記述されています。

  • 日本人を含むアジア系の人種 には、遺伝的に乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が少なかったり、活性していなかったりする人が多くおり、こういった欠損が認められることを乳糖不耐症という。
  • もっとも強く指摘すべき点は、乳糖不耐症であるからといって、栄養素をまったく吸収できないわけではないということだ。
  • 乳糖不耐症がカルシウムなどの栄養素の吸収を妨げているわけではなく、それらはむしろきちんと吸収されている。下痢=消化・吸収不良というイメージが直観的に想起されるが(確かにそういう意味もあるが)少なくとも牛乳の場合、有害説を唱えるほど強力な根拠とはならない。 

次に、

「牛乳を飲みすぎると骨粗鬆症になる」といった理論についてですが、これについては次のように述べられています。

  • 一つ目は、なぜカルシウム量が“減るのか”、という点である。確かに、身体の恒常性という意味において、体に吸収されたもののうち、不要な部分は排出される。しかし、それは体内組織のバランスを保つためであり、カルシウム量が“減る”という意味にはならない。
  • 二つ目は、なぜ牛乳だけがダメなのか、という点である。新谷氏は、小魚や海藻類でカルシウムを補充することは奨励しているが、それは、牛乳だけがダメだという説明にはなっていない。仮に、上述の「恒常性コントロール」が働くのなら、小魚や海藻類についても同じ理論が適用されそうであるが、その点には応えていない。
  • 新谷氏は牛乳の多飲が骨粗鬆症発症に影響を与えているという説を展開しているが、この言説の背景には、アメリカ、スウェーデン、デンマーク、フィンランドなどの酪農がさかんで牛乳を大量に飲んでいる国では骨粗鬆症が多いという説があり、また新谷氏がその科学的根拠としているのは「Milk, Dietary Calcium, and Bone Fracture in Women」D. Feskanich et al American J. Public Health,Vol. 87, 991~997 (1997)と、WHOによる「カルシウム・パラドックス」に関するレポートである。

    しかし、前者の論文は牛乳多飲によって骨粗鬆症の予防効果はなかったとしているだけのものであり、牛乳が発症に影響を及ぼすという因果関係を述べたものではなく、有害であるという言説を裏付けるものでもない。また、後者のWHOのレポートに関しては、そもそも牛乳の多飲について触れてすらいない。

その他の牛乳有害説の

根拠とされているデータについては、次のように述べられています。

  • たとえば、①ホモジナイズすることにより、生乳に含まれていた乳脂肪は酸素と結びつき「過酸化脂肪」に変化する、②牛乳に含まれるたんぱく質の約八割を占める「カゼイン」は、胃に入るとすぐに固まってしまい、消化がとても悪い、などの主張が新谷氏によって展開されており、それぞれ、①「Homogenization of milk and milk products」Milk Homogenization and Heart Disease,Mary G. Enig, PhD((学の教科書的HPの一節)と②「Milk」(オレゴン州立大学の教科書だと思われる)がその根拠として提示されている。

    しかし、①②にはともに新谷氏の主張を裏付ける記述はなく、統計データの誤用、もしくは恣意的な文脈の選択があることがうかがえる。

先の骨粗鬆症の問題については、

『牛乳消費量の多い国に骨折が多いという相関データが得られたとしても、それらの国が高緯度地域で日射量が少なく、骨形成に必要なビタミンDの生成量が少ない可能性や、それらの国に長身で脚の骨の長い人が多く、骨折頻度が高い可能性が指摘でき、有害説を主張する妥当性は低い。 』といった記述もありました。

更に、『また、牛乳有害説では、研究論文や臨床データの中から「牛乳が有害である」という結論を導くために都合のよい部分のみを切り取り、あるいはそれを極端に誇張した形で発信することで、かろうじて成立しているとさえいえ、妥当性のある評価がされているとは言い難い。』といった記述も見られました。

有害なら、

その使用を止めるのは当然ですが、もし有用であるなら、中止することで大きな損失を招きます。

有害と言い切るなら、(多くの反論に対しても)その確実な根拠を示すことが大切で、それなくしていたずらに不安を煽ることは、大きな社会的損失の責任をとらざるをえないことを、肝に銘ずる必要があるとも思われますが、いかがでしょうか。

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