高速道路の無料化

現政権のマニフェストに「高速道路の無料化」という約束がありました。

残念ながらこの約束も他のいろいろな約束同様、捨て去られました。理由は「無料化すると高速道路が混雑して、その機能を失う」というようなものでした。このことについて検証してみたいと思います。

この理由の根拠は

「試験的に限定的な無料化を実施したところ高速道路が混雑した」という点にあったと記憶していますが、この根拠は正しいものなのでしょうか。

今がそうだから将来的にも良くないと考えるのは、あまりにも短絡的です。確かに「現状態のままで無料化すれば混雑するのは当たり前」です。それは混雑の一番大きな原因は「一般道との接点」にあるからです。

料金徴収のためには

一定の施設が必要であり施設関連費用と人件費がかかること、またそこでの支払い行為には時間がかかること、それらを考えると現状ではそんなにたくさんの料金所を設置することはできません。

料金体系にもよりますが、一般道に出るには料金精算が必要なため、料金所を伴った出入り口ということが一般的になり、結果出入り口が少なくなります。

出入り口が少ないということは「一般道との接点が少ない」ということになり、一旦高速に乗ったらしばらくは降りられないことを意味します。このような中で無料化を実施すると、最初のうちは特に多くの人が高速を利用しようとするために高速に乗り、そしてしばらくは一般道に降りられないとなれば当然渋滞になることが予想されます。

この「高速道路の無料化」は、

「料金所が不要となることで、安価な出入り口をたくさん作ることができる」ということがセットで実施されるべきものでした。そうなれば一般道の混雑具合を見ながら、高速に乗ったり、一般道に降りたり、自由に選択することによって、よりスムーズな運行が行われます。

それでも混雑するとなれば、元々道路が少なすぎたということで別の問題になります。別の言い方をすれば、高速道路だけを特別化し、一般道の利便性が悪すぎたということもできます。

この「高速道路の無料化」は単にスムーズな運行だけではなく、

もっと壮大な構想がありました。それは日本という狭い土地にも関わらず、一局に集中する傾向を改善しようというものでした。

つまり「高速道路が無料化」になることで、大都市周辺への分散が図られることになります。都心に入って狭い道を30分走るのと、高速で30分走ることが料金的に同じになれば、中心街を離れて高速の出入り口近辺に、事務所や店舗を構えた方が固定費を減らせることになります。

今までほとんど利用されていなかった土地が

利用されるので土地代が安価になり、その分建設費や維持費も安価になるからです。高速バスも増えて、働く人がどんどん郊外へと出て行くようになります。

そうするとその周辺には住宅地が広がり、分散化が進みます。相対的に今までの都心の地価が下落することも考慮にいれると、あるべき姿だと思います。

大地震などの様々な災害の影響を考えても、

一極集中は避けなければなりません。このような壮大な計画を持っていた「高速道路の無料化」という政策が、「返って混雑を招くから」という、とってつけたような理由で捨てられたと思うと情けなくなります。

勿論、すぐに一般道との接点を増やすことはできないかも知れません。しばらくは混雑が続くかもしれませんが、最低限いくつかの出入り口を無料化にあわせて追加することはできるでしょうし、運送協会などでも、今までの料金を思えば出入り口の建設費用としてお金を提供するという案もあるでしょう。料金徴収の必要がない出入り口の建設費用は格段に安価なものとなることが追い風になって、やがてはどんどん出入り口がつくられるはずです。

要は

「無料化」を決めてしまえば、その後様々に動いていくと思います。周辺への展開が現実的になれば、周辺の自治体や商店街などが自前で、出入り口を建設するということもあるでしょう。

私達は政策を評価して政党を選びますが、その政策を評価する場合は、一時的なマイナスと将来的なプラスの両方を考慮する賢明さをもつべきではないでしょうか。そしてその政策が捨てられた時は「現状を維持することで、誰が得するのか」をよく考えてみる必要があります。

本当にそうすることが多くの国民のためになっているのかどうか、良く目を光らせ、頭を働かせることを忘れないようにしたいものです。

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