第五のがん治療「光免疫療法」

『手術、抗がん剤、放射線、免疫治療薬に続く「第五のがん治療」と言われる「光免疫療法」が世界に先駆け、日本で実用化される。』という発表がありました。


 

手術、抗がん剤、放射線、免疫治療薬に続く「第五のがん治療」と言われる「光免疫療法」が世界に先駆け、日本で実用化される。楽天の子会社、楽天メディカルジャパンは9月25日、厚生労働省の承認を取得。29日に都内で記者会見した楽天の三木谷浩史会長兼社長は、「(今回、承認を取得した頭頸部がん以外のがんにも)対象を広げていきたい」と語った。

光を当てることでがん細胞だけを壊死させる

承認を受けたのは、楽天メディカルジャパンが開発した医薬品「アキャルックス」。「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がん」を効能・効果として、厚労省から製造販売承認を取得した。同剤との組み合わせで使う医療機器レーザー装置の「バイオブレードレーザシステム」は9月2日に承認を取得している。

光免疫療法とは、特殊な化学物質をがん細胞に集積させ、その物質に光を当てることでがん細胞だけを壊死させる、まったく新しい治療法だ。

楽天メディカルは「光免疫療法」を使ったこの治療法を「イルミノックス・プラットフォーム」と名付けた。第1弾として承認を得た「アキャルックス」は、モノクロルーナ抗体の一種で、頭頸部がんのがん細胞の表面上に高いレベルで発現するタンパク質「ヒト上皮細胞成長因子受容体(EGFR)」に選択的に結合する。

EGFRに結合したアキャルックスに光を照射するとがん細胞の表面に傷がついてそこから水が入り、膨張したのちに破裂して壊死してしまう。光免疫療法の発明者である米国立がん研究所(NCI)の研究員、小林久隆氏は29日の記者会見で特別講演し、従来のがん治療との違いをこう説明した。

「がん腫瘍はがん細胞とがんを助ける細胞(悪玉)と、がんと闘う細胞(善玉)のミックスチャー。既存の三大治療法(手術、抗がん剤、放射線)はその一切合切を取り除くやり方で、がんと闘う細胞まで痛めつけてしまう。光免疫療法は体の毒にならない化学物質を使って、がん細胞だけを狙い撃ちにする。攻撃と防御を両方行える治療法だ」

【文春オンライン 配信】

この

「光免疫療法」につきましては当ブログでも以前に取り上げたことがありました。


 


 

その仕組みなどについても上記の記事↑で詳しく紹介させていただいておりますので、興味のある方は一度閲覧してみてください。

ウィキペディアにも

次のように紹介されています。

『光免疫療法は、光線力学療法と免疫療法を組み合わせた、開発中の新たながん治療法の候補のひとつである。2015年4月にアメリカ食品医薬品局(FDA)から臨床試験開始許可を受け、現在は臨床第3相試験を実施中。略してPITまたは、近赤外光線免疫療法(NIR-PIT) 』

『2011年11月6日、アメリカ国立がん研究所(NCI)と米国国立衛生研究所(NIH)の主任研究員である小林久隆らの研究グループが、ネイチャー メディシン誌上にて、その開発を発表した。
この療法は、特殊な薬剤と近赤外線を使いがん細胞を破壊するものである。近赤外線は、損傷を与えることなく生体組織内部に到達することが可能である。特定の細胞に抗体薬剤を結合させ、近赤外線を照射することで、その細胞膜を破壊し、破壊後のすべての抗体が免疫系に露出することで生体内で超選択的(非特異的)ながん細胞の死滅だけにとどまらず、破壊されたがん細胞の残骸に含有されるがんの特異的抗原に免疫反応を惹起するため、照射した箇所以外のがん細胞や転移したがん細胞にさえ効果を及ぼす可能性がある。』

『日本では2018年3月から国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)臨床試験のフェーズ1が、始められた。アメリカでは2018年4月現在ですでにフェーズ2が終わっており、米食品医薬品局(FDA)は承認審査を迅速に進める方針を発表した。現在の治験対象は、日米ともに再発頭頸部がん(鼻、口、喉、耳、顎など)だが、肺がん、大腸がん、乳がん、すい臓がん、前立腺がんに応用することが検討されている。』

その仕組みを

簡単にまとめますと次のようになります。

「がん細胞の表面に多く発現するタンパク質があり、そこに結合する抗体がある」。

「この抗体に光増感剤という近赤外線を当てると熱を放出する性質のあるものを付けた薬を点滴で投与する」。

「近赤外線は、損傷を与えることなく生体組織内部に到達することが可能であり、内視鏡などを使わなくても身体の外から光を当てることでがん細胞が熱により一瞬ですべて破壊される」

がんの治療は

多大な身体的、精神的負担を強いるものという考え方が一般的だと思われますが、この治療法が進展することでもっと(ある意味)簡単にがんを撲滅できるとすれば大いに希望の持てる時代になってきたと言えるかも知れません。

SF映画に「透明なガラス容器に入った病人に光を当てることで、一瞬にして病気が治る」というシーンがあったと思いますが、ある意味これが実現すると思えば正に画期的なできごとと言えるのではないでしょうか。

今後の展開が楽しみです。

 

参考情報: