新型コロナ対するメルケル流危機管理術
『「新型コロナウイルスに対するワクチンも存在せず、治療法さえない中で、専門家は国民のうち最大で60~70%が感染すると見ています」。新型コロナの感染拡大がアジアから欧州へと広がる中、ドイツのメルケル首相は3月11日にベルリンで開いた記者会見の冒頭、こう発言した。』そうです。 |
「新型コロナウイルスに対するワクチンも存在せず、治療法さえない中で、専門家は国民のうち最大で60~70%が感染すると見ています」。新型コロナの感染拡大がアジアから欧州へと広がる中、ドイツのメルケル首相は3月11日にベルリンで開いた記者会見の冒頭、こう発言した。主要メディアが「ドイツ人の7割が感染も」と速報で伝えると、国内には強い衝撃が広がった。
事実を客観的に述べるショック療法で始まった会見は、欧州を襲った数々の政治的、経済的な危機を解決してきたメルケル流危機管理術の教科書のような内容だった。こうした手腕はどう培われてきたのか、「メルケル神話」の源流になった金融危機の裏側を元政権幹部への取材で振り返り、新型コロナ危機が欧州の未来に及ぼす影響を考察した。
衝撃の記者会見で、メルケル首相が国民に求めたのは以下のような対策だった。
1)1000人以上が集まる集会は中止する。小規模集会についても再考する。
2)せっけんで20秒以上かけて手洗いすることや、せきをしている人に近づかないなど感染症研究機関のガイドラインに基づいた行動を取る。
そしてその目的について、できるだけ感染拡大を遅らせて「時間を稼ぐこと」と説明した。また、独政府がワクチン開発に財政支援し、欧州各国と感染拡大阻止のためあらゆる連携を深めることを表明した。
メルケル氏は歴代の独首相の中で唯一理系の博士号(物理学)を有し、東独時代はベルリンの物理化学研究所の研究者だったという異色の経歴の持ち主だ。ベルリンの壁崩壊(1989年)に始まる東独民主化期に政治の世界に入り、中道右派の国政第1党、キリスト教民主同盟(CDU)に所属。「統一宰相」と呼ばれたコール首相(CDU)の秘蔵っ子として政界のキャリアを積んだ。
【毎日新聞 配信】
メルケル首相が
会見で国民に求めたことについての説明として『その目的について、できるだけ感染拡大を遅らせて「時間を稼ぐこと」と説明した。』そうです。
新型コロナについては、
今、世界中で感染が報告されていますが、少しずつ情報が蓄積されてきているようです。
- 感染すると高齢者や基礎疾患のある人(免疫力の弱い人?)は重篤になりやすい。
- 感染した後、陰性になる人もいる。つまり抗体ができている人がいるということになる。
- 一時的に地域や国を閉鎖しても、いずれ後で感染が急増することもある。最終的には多くの人々が抗体を持たなければ感染の流行は収束しない。
- PCR検査では、今この瞬間に体内にウイルスがあるかどうか(他人にうつしやすいかどうか)が分かり、抗体検査は過去にかかったかどうか(かかって治った?かどうか)が分かる。
- アビガンやBCGワクチンなど、対応可能な薬(もちろん副作用もある?)が明確になりつつある。
抗体検査については、
このような記事も見られます。
これらのデータを踏まえると、
為すべきことが見えてきます。
- 最終的には多くの人々が感染し、重篤にならずに抗体を持つことで収束する。
- そのためには適量(?)の新型コロナウイルスを摂取して抗体を作ることができるのなら、それが一番望ましいのかも知れない。
- 免疫力の低下している人の重篤化を避けるため、また薬などの開発のための時間を得るためには、急激な感染増加を防ぐ意味で、閉鎖措置は有効だが、その実施基準を作るためにも、できるだけ広範囲なサンプリングとしてのPCR検査や抗体検査を行う必要がある。
- 閉鎖措置をより厳密にするには国による困窮者への財政援助が欠かせない。
- 重篤者が増えた場合に備えての対応(病室、ベッド、人工呼吸器など)を準備しておく。
いわゆる
インフルエンザというウイルスに対しては今や何ら恐怖心を覚えませんが、対処法が不明なウイルスに対しては大いに恐怖心を覚えます。
今回の新型コロナウィルスの流行は、日頃のウイルスへの研究体制・治療体制の在り方や、薬剤の開発と認可の効率化(世界的連携やファンドの確立などを含めて)、マスクなど必要な物への国家的配慮(最低限の国産拠点の確保、備蓄)など、今後対応の必要な事柄に関するいろいろな教訓を提示しているものと思われます。
人間は完全ではありませんが、現実から学び、備える知恵はあるのではないでしょうか。