iPS細胞から「ミニ多臓器」初成功

ヒトのiPS細胞から、肝臓と胆管、膵臓(すいぞう)を同時につくることができたと、東京医科歯科大の武部貴則教授らの研究チームが発表したそうです。


 

ヒトのiPS細胞から、肝臓と胆管、膵臓(すいぞう)を同時につくることができたと、東京医科歯科大の武部貴則教授らの研究チームが発表した。iPS細胞から、それぞれの臓器がつながった「ミニ多臓器」をつくったのは初めてという。論文は25日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。

iPS細胞を使ったこれまでの研究は、神経や心臓の細胞といった特定の細胞をつくるものが多かった。武部さんらは2013年、iPS細胞から初めての臓器となる「ミニ肝臓」をつくった。しかし、一つの臓器をつくって移植したとしても、機能が十分に発揮されなかったり長く働かなかったりするという課題があった。

研究チームは、胚の発生初期には、胚の特定領域でレチノイン酸が生成し、胚の後部の発達を導く細胞間シグナル分子として、胚の軸に沿った前部/後部を決定する助けとなる複数の臓器を同時につくれないかと考えた。まず、iPS細胞から前腸組織と中腸組織という消化器系の臓器のもとになる二つの組織をつくった。これをくっつけたところ、境界部分に肝臓、胆管、膵臓のもとになる細胞が出現した。

この細胞を培養すると、肝臓と胆管と膵臓がつながったミニ多臓器ができた。受精から1~2カ月の胎児の臓器ほどの大きさという。チームは前腸組織から出るレチノイン酸という物質が、肝臓、胆管、膵臓のもとになる細胞ができるのを促したとみている。

実際にヒトに移植するには臓器とともに血管なども同時につくらなければならない。武部さんは「まだ基礎研究の段階だが、10年以内に今回開発した技術を実用化させて患者に届くようにしたい」と話している。(戸田政考)

【朝日新聞デジタル 配信】

iPS細胞を

用いた研究がかなり進んでいるようです。

これまでの研究では特定の細胞をつくるものが多かった中で、今回の報道では複数の臓器のもとになる細胞が出現したそうです。

消化器系の

臓器のもとになる二つの組織(前腸組織と中腸組織)から、境界部分に肝臓、胆管、膵臓のもとになる細胞が出現し、この細胞を培養すると肝臓と胆管と膵臓がつながったミニ多臓器ができたとのことです。

これらの多臓器は受精から1~2カ月の胎児の臓器ほどの大きさだそうですが、前腸組織から出るレチノイン酸という物質が、これらの多臓器のもとになる細胞ができるのを促したとみているそうです。

ウィキペディアでは

このレチノイン酸について次のように説明しています。

『レチノイン酸 (Retinoic acid) は、ビタミンA(レチノール)の代謝物質で、成長や発達に必要なビタミンAの機能を媒介する。レチノイン酸は、脊椎動物にとって必須である。胚の発生初期には、胚の特定領域でレチノイン酸が生成し、胚の後部の発達を導く細胞間シグナル分子として、胚の軸に沿った前部/後部を決定する助けとなる。この機構は、胚の発生初期にホメオティック遺伝子によって制御される。』

『胚の発達におけるレチノイン酸の主要な役割は、分化のコントロールであるが、この効果自体が副作用を引き起こす原因にもなる。』

詳しいことは分かりませんが、

「胚の発生初期には、胚の特定領域でレチノイン酸が生成し、胚の後部の発達を導く細胞間シグナル分子として、胚の軸に沿った前部/後部を決定する助けとなる」ということで、胎児における一つの事象(経過)でもあるようです。

物事の理解は、いわゆる点から線へと伸び、線から面へと広がるものですが、iPS細胞による臓器生成への理解も点から線へと伸びつつあるようです。

結局の所、

人体で行われている様々な代謝活動を詳しく分析し、そこで生み出される代謝物質を用いることの意味を、今回の報道では教えているものと思われます。

報道にもありますが、「実際にヒトに移植するには臓器とともに血管なども同時につくらなければならない」ということで、それらを個々につくるのではなく一貫して全体としてつくることが現実的な課題として浮上しているとも言えます。

そのためにも

今回の研究成果は、一つの指針を示す大きな成果であり、今後の研究を進める上での重大な手がかりを残したものと思われます。

このところの医学分野での研究成果には、大きな展望が開ける可能性を感じさせるものが続いていますが、今の子供達が老人になるころには、おそらく今の時代とはかけ離れた、高度な技術が応用されている世界になっているのでしょうね。