トランプ政権、対中制裁第4弾一部発動

トランプ米政権は米東部時間1日午前0時1分(日本時間午後1時1分)、まだ制裁対象にしていない3000億ドル(約32兆円)規模の中国からの輸入品の大半に15%の追加関税を課す対中制裁第4弾の一部発動に踏み切ったとのことです。


 

トランプ米政権は米東部時間1日午前0時1分(日本時間午後1時1分)、まだ制裁対象にしていない3000億ドル(約32兆円)規模の中国からの輸入品の大半に15%の追加関税を課す対中制裁第4弾の一部発動に踏み切った。中国政府も同時刻、750億ドル規模の米国製品に5%か10%の追加関税を課す報復措置の一部を実行に移した。米中は12月15日に残りを発動する。制裁・報復の応酬がさらに拡大し、米中の貿易戦争は一段と深刻な状況に陥った。

対中制裁第4弾の対象は3798品目。このうち1日は衣料品や薄型テレビ、乳製品など3243品目分に発動した。中国からの輸入依存度が高く、年末のクリスマス商戦への影響が大きいスマートフォンやノートパソコン、ゲーム機、おもちゃなど555品目の発動は12月にずらした。

第4弾がすべて発動された場合、中国から輸入するほぼすべての製品に追加関税が課される事態となる。米国は既に25%の追加関税を課している2500億ドル規模の中国製品についても10月1日に税率を30%に引き上げると表明しており、立て続けに制裁規模を拡大することで中国に産業政策の見直しなどを迫る戦略とみられる。

米中は6月末の首脳会談で貿易戦争の一時休戦に合意したものの、7月の閣僚級通商協議が不調に終わったことを受け、トランプ氏が8月1日、対中制裁第4弾の発動を表明。これに対し中国が23日に報復を打ち出すと、直後に米国が対中制裁の追加関税率を一律5%引き上げると発表するなど報復合戦がエスカレートしていた。

【毎日新聞 配信】

米中の

貿易戦争(制裁・報復関税)は激しさを増していますが、この根底にある問題について考えてみたいと思います。

この問題の根は一言で言うと「労働力の価格(水準)」にあります。

経済的に

発展してきた国では製品価格も労働価格(水準)も共に上昇しますが、製品価格は生産性の向上により大量生産の流れができると低下に転じるのに対して、労働価格(水準)は簡単には低下しませんので、利益を更に増やすには一層の生産性の向上が求められます。

従って先進国で「モノづくり」をする場合は、高い労働価格(水準)を維持しつつも高度な生産性により単位あたりの価格を下げることで利益を得ようとしますが、一方後進国では生産力(生産性)が低く、大量には生産できませんが、労働価格(水準)も安価なためそれなりに利益が得られます。

先進国と

後進国が各々の領域で生産し販売している限りは互いに利益を確保できますが、これが貿易により個々の領域を超えて販売される時代になると、後進国の中でも比較的高い生産力(生産性)を持つ国が現れ、その国が先進国に比べるとより安価な労働価格(水準)を背景に、より安価な製品を先進国に輸出するようになります。

品質が良く安価な製品が売られると当然そちらの製品が購入されますので、先進国の企業はそれに対応する必要に迫られ、やがては労働価格(水準)の安価な後進国に先進国の生産拠点を移し、同様に品質のよい安価な製品を生産して販売するようになります。

その結果、従来「モノづくり」に携わってきた先進国の人達や下請け企業は職を失うことになります。

ここで

「農産物などの関税が何故かけられるのか」ということに視点を移したいと思いますが、たとえば日本の農業の場合、耕地面積が狭く、また集約も進んでいませんので、生産性が低く、米国の農業のような生産性の高い農産物と競争しても「(質と?)価格」ではとてもかないません。

そのような状態で自由に競争すると、当然日本の農業は衰退し、農業生産が低下し、食料品の供給が外国からの輸入に頼ることになりますので、その結果、安定的な食料自給という点において大きな不安が生じることになります。

その解決策として

生まれた政策が「外国からの農産物を高めに設定する」ための「関税」という政策です。

「関税」により輸入品の価格が引き上げられれば国産の農産物との価格が釣り合い、競争できるようになり、日本の農業も維持・発展できるようになります。

また

話を「モノづくり」に戻しますと、労働価格(水準)の安価な外国の製品を自由に輸入させるということは、その輸入する国側の高い労働価格(水準)にとっては関税をかける前の農産物が自由に入ってくることと同じことになり、とても競争には勝てず、つまりは「モノづくり」に携わる人達や下請け企業は衰退の一途を辿ることになります。

端的に言えば、安価な労働価格(水準)から高くなった労働価格(水準)を守るためには、農産物に「関税」をかけて守るように、安価な労働価格(水準)により作られた製品全てに「関税」をかけるべきだということになります。

例えば

日本の企業が中国で製品を作ってそれを日本に輸入する場合でも、それらの輸入品に一定の割合で労働「関税」をかけることを意味しています。

海外では移民の問題も大きな問題になっていますが、「いずれは国に帰るので、あるいは仕送りをする間だけなので、安い給料でも良い」という移民が多くなれば、全体として国内の既存の従事者の仕事を奪うことになり、また収入低下の原因にもなりますので、そのような移民に対しては特別な税金を課して水準を維持するなどの政策が必要になるものと思われます。

報道では

米中の「関税」のかけあいを伝えていますが、これまでの考察の結果からすると、米国の「関税」には正当性がありますが、中国の「関税」は単に相手がやっているから我が国もということにすぎず、正当性はないものと思われます。

ある国の安価な労働価格(水準)が他の国の高価な労働価格(水準)を破壊することは決して好ましいことではなく、トランプ氏の(手法は別として)姿勢にはかなりの正当性があると思います。

安価な

労働価格(水準)の国で作って売れる企業は良いとしても、国内で製品づくりに携わざるを得ない関係者もたくさん存在しますので、そのような人達に対する配慮という点においては、米国のトランプ政権は一石を投じていると言っても過言ではないと思います。

その意味では日本も、安価な労働価格(水準)の国の輸入品から、自国の製造に携わる人達や下請け企業を守るための政策(「関税」?)を考える必要があるものと思われますが、いかがでしょうか。