人工肝臓で脂肪肝の再現に成功

増え続ける非アルコール性脂肪肝の研究のためにヒトの細胞(iPS細胞)から人工の肝臓が作られたそうです。


 

見た目は人間の肝臓のようだが、本物より少し小さいその肉の塊は、ヒトの細胞から作られた人工の肝臓だ。実験室で作られたものとしては最も複雑な臓器だという。肝臓と言えば、消化を助け、有害な物質を解毒するなど、多くの重要な役割を担っている。

研究チームが小さな臓器を作った目的は、病気にするためだ。その結果が、8月6日付けで学術誌「Cell Metabolism」に発表された。

肥満が増えるにつれて、肝臓に脂肪が蓄積する非アルコール性の脂肪肝が増えている。悪化すれば、肝不全に陥る病気だ。米国だけでも、現在8000万~1億人の患者がいるものの、病気がどのように進行するのかはよくわかっていない。

様々な病気の研究では、これまで動物が決定的な役割を果たしてきた。だが、動物と人間では、生物学的に異なる部分が当然ある。その壁を乗り越えようと、今回の研究では、ミニ肝臓が果たす大きな役割に焦点を当てている。

「人間の肝臓を人工的に作れれば、組織のゲノムを自由に操作して疾患を再現し、研究できます。これが、これからの医学になると思います」と、論文の筆頭著者で米ピッツバーグ大学医学部のアレハンドロ・ソト・グティエレス氏は述べている。

【National Geographic 配信】

iPS細胞の

最も威力を発揮する分野がミニ臓器分野だと思われますが、今回の報道ではミニ肝臓が作られたとのことです。

2003年にヒトゲノムという人の遺伝情報が解析されましたが、それ以来、その遺伝子情報は医療分野や研究分野など様々な分野において活用され、素晴らしい成果をもたらすための重要な情報源となっています。

ブリタニカ国際大百科事典では、

ヒトゲノムについて、次のように解説しています。

『人体の全染色体を構成する約 30億塩基対のデオキシリボ核酸 DNA。ヒトゲノムには、全遺伝子約 2万5000の情報を記録するコード領域と、遺伝情報を伝えない非コード領域がある。2003年にすべての DNA配列が解読された(→ヒトゲノム解析計画)。』

遺伝子についての情報は、

細胞増殖時の異常(がん細胞)に対処する上で大変重要な役割を果たしていますが、今回報道のミニ肝臓のようなミニ臓器の果たす役割もそれに劣らず重要な役割を果たすものと思われます。

ヒトゲノムのように人体の全ての臓器の情報がミニ臓器という形で得られる日もそんなに遠い日ではないような気がします。

報道にもありますが、

人のミニ臓器を作成できるということは、様々な形の人の臓器の病変を再現させることができるということでもあり、これまでの動物を利用した実験よりもよりはるかに正確なデータが得られるものと思われます。

やがてはミニ臓器から本来の臓器へと作製技術が向上するものと思われますので、そうなるとそれを移植することで病気を治すことも可能になっていくものと思われます。

そうなれば

iPS細胞に関する研究の本来の目標が現実となるということで、病気で苦しむ人が激減する時代の到来も近いということではないでしょうか。

関係者の皆様には今後益々の活躍を期待したいと思います。