韓国の水産物輸入規制に「お墨付き」

世界貿易機関(WTO)を舞台にした日本と韓国の水産物の輸入制限を巡る争いは、日本の「逆転敗訴」となったそうです。


 

世界貿易機関(WTO)を舞台にした日本と韓国の水産物の輸入制限を巡る争いは、日本の「逆転敗訴」となった。東京電力福島第1原発事故後、韓国が実施する日本産水産物の輸入規制に事実上の「お墨付き」が与えられた結果となり、日本の提訴が裏目に出た形。農水産物の輸出拡大を目指す政府の戦略への打撃は必至だ。今回の判断は、日韓関係や被災地の復興に影響を与える可能性もある。

 


 

予想外の判断である。日本は、科学的根拠に基づき、水産物の安全性を訴え続けるしかない。

世界貿易機関(WTO)の上級委員会は、韓国による日本産水産物に対する輸入禁止措置について、事実上容認する報告書をまとめた。

是正を求めたWTO紛争処理小委員会(パネル)の判断を破棄し、日本の逆転敗訴となった。上級委は最終審にあたる。韓国の禁輸措置は当面続く見通しだ。

(略)

現在、WTOの紛争処理機能は低下している。上級委の判事にあたる上級委員の定員は7人だが、うち4人が欠員だ。WTOに批判的な米国が委員の指名を拒否し続けているためで、このままでは機能不全に陥る恐れがある。

上級委の立て直しを含めたWTO改革についても、日本は各国と連携しながら取り組むべきだ。

 


 

韓国による福島など8県産の水産物輸入禁止措置をめぐる世界貿易機関(WTO)判決は日本にとって事実上の「敗訴」となった。2014年に判決が下った調査捕鯨に続く失敗だ。国際法を盾に突破口を開く外交戦略は見直しを迫られる。

WTOの上級委員会の判決は、日本産食品の安全性を認めた一審の判断を変えていない。韓国が日本に対する措置を強化する際に周知義務を果たさなかった点でもWTO違反を認めている。

しかし、輸入規制措置そのものがWTO違反だという肝心の主張が受け入れられなかった。一審は韓国の措置が日本を不公正に差別しており「過度に貿易制限的」だとした。上級委はその判断を取り消した。

 


 

上級委が問題視したのは日本が勝訴した1審でのパネルの手続きだ。放射性物質による健康被害への懸念を背景にした韓国の禁輸措置が適切かどうかを判断するためには、年間の許容内部被(ひ)曝(ばく)放射線量、対象となる魚の生息海域、達成可能なより低い被曝水準の設定という3つの要素を考慮しなければならないが、パネルは許容内部被曝放射線量だけを基準に判断したという。

【毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞、SankeiBiz 配信】

この問題は

少し分かりにくい面があり4紙の報道を引用させていただきましたが、要するに世界貿易機関(WTO)判決での一審では『韓国の措置が日本を不公正に差別しており「過度に貿易制限的」だとした』のに対し、上級委(最終審)ではその判断を取り消したということになるようです。

具体的には「日本産食品は科学的に安全」であり、「韓国が規制措置を強化する際、周知義務を果たさずWTO違反」があったが、しかし「韓国による輸入規制措置は日本に対して恣意的で差別的」とは言えず、「韓国が日本だけ追加の試験を要求するなどの措置は過度に貿易制限的」とも言えないということのようです。

現在、

原発事故に伴う輸入規制を継続しているのは23カ国・地域とのことです。

一部の都県などを対象に輸入停止している国・地域は「香港、中国、台湾、韓国、シンガポール、マカオ、米国、フィリピン」であり、一部または全ての都道府県を対象に検査証明書などを要求している国・地域は「インドネシア、ブルネイ、仏領ポリネシア、アラブ首長国連邦、エジプト、レバノン、コンゴ民主共和国、モロッコ、欧州連合(EU)、アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン、ロシア」であるとのことです。

輸入規制を継続している国が複数ある中で韓国を提訴したのは、『韓国は、東京電力福島第一原子力発電所事故後の2013年9月から福島、岩手、宮城など8県産の水産物の輸入を全面禁止している。』ということで、規制がより厳しいためと言われています。

今回の問題は、

記事中『上級委が問題視したのは日本が勝訴した1審でのパネル(1審の世界貿易機関=WTOの紛争処理小委員会)の手続きだ。放射性物質による健康被害への懸念を背景にした韓国の禁輸措置が適切かどうかを判断するためには、年間の許容内部被(ひ)曝(ばく)放射線量、対象となる魚の生息海域、達成可能なより低い被曝水準の設定という3つの要素を考慮しなければならないが、パネルは許容内部被曝放射線量だけを基準に判断したという。』という文言が見られますが、要するに「水産物自体は科学的に安全」ではあるが、「その水産物が生息する海域の安全性」や「より低い被爆水準の設定」という点での確証が得られないということで、必ずしも恣意的、差別的とは言えないということになります。

簡略化すれば、

とれた水産物は安全でも、広い日本の海域での安全性が確認されている訳でもなく、また今後どんどん被爆水準が低下するという確証もないということになるようです。

つまりは福島原発での汚染水処理(海洋に投棄しても安全という判断がある)が懸念されているということでもあると思います。

これは

人の感覚の問題であり、国内でも敬遠する人はたくさんいます。

ある国が国民の多くの不安を代弁して規制したとしても、それを非難することには無理があるという判断で、残念ではありますが正しい判断だと思います。

その意味では

福島原発の汚染処理が完全に終了するまでは続くかも知れませんが、少なくとも処理が年々進まなければ信頼回復が早まることはないのかも知れません。

長い年月をかけて少しずつ克服していくしかないようですが、原発というものの安全性について考える一つの良い機会になったような気がします。