「中年フリーター」は“社会問題”
超就職難の時代に社会へと出た「就職氷河期世代」は40歳前後の中年となった今も、長期失業者や就職希望の無業者が30万人を超え、男性の非正規雇用者比率は10%近いそうです。 |
超就職難の時代に社会へと出た「就職氷河期世代」は40歳前後の中年となった今も、長期失業者や就職希望の無業者が30万人を超え、男性の非正規雇用者比率は10%近い。氷河期世代について長く取材し、「中年フリーター」などの著書を持つジャーナリストの小林美希さんに、この世代の苦境の現状やその要因、救済策などを聞いた。
―就職氷河期に社会に出た学生の多くが非正規社員として働くことを余儀なくされました。それから20年ほどが経過し、彼らの就業状況は改善しているのでしょうか。
改善したとは言えず、むしろ自体は悪化していると感じている。2015年時点で35‐54歳のうち、既婚女性を含まない非正規は約270万人。同世代で扶養に入るための就業調整をしていない非正規の女性は約410万人いるという統計を踏まえると、(既婚女性を含めた)非正規は500万人を超えるかもしれない。この世代が若年層だった01年当時の非正規は410万人ほどだった。
―小林さんの著書「中年フリーター」では非正規から抜け出せず、“あきらめ”を感じている方の存在も指摘しています。
取材したある男性から「正社員なんて無理。月給20万円なんてぜいたくだ」といった言葉を聞いた。正社員を目指して努力していたが、報われないまま年を取った。その結果、「今生活できていればいい」という気持ちを抱いている。彼らの苦境は深刻さを増している。このまま高齢者になると生活保護を受ける可能性が高まる。社会問題として本当に手遅れになる。
―政府は03年に「若者自立・挑戦プラン」を策定するなど、就職氷河期世代に対して就労支援を行ってきました。これらは効果がなかったのでしょうか。
効果を上げたとは言いがたい。多様な支策は講じたが、それ以上に労働者派遣法の改正などの規制緩和によって非正規を生み出しやすい社会構造に変えてしまったため、(非正規から正社員への転換などが)追いつかなかった。労働者を痛めつける政策を進めてしまい、それが今の(40歳前後になっても非正規として働く)中年フリーターを生み出した。一方で企業にも大きな間違いがあったと思う。
―企業の間違いとは何ですか。
00年代前半に企業利益はV字回復していった。ただ、それは正社員の比率を下げ、非正規を増やして利益を確保しただけで、本当の回復とはいえなかった。そしてそのまま非正規の多さは常態化している。企業は従業員の生活の安定の上でしか成長するのは難しい。例えば、製造業も現場の従業員が明日の就業環境について不安を抱えている状況ではイノベーションを起こせるはずがない。今から(正社員比率を高めるなどの)転換を図るべきだと思う。
【ニュースイッチ(日刊工業新聞) 配信】
現実の問題を
深く考察した記事だと思います。中でも次の文言は心に深く突き刺さりました。
『企業は従業員の生活の安定の上でしか成長するのは難しい。例えば、製造業も現場の従業員が明日の就業環境について不安を抱えている状況ではイノベーションを起こせるはずがない。今から(正社員比率を高めるなどの)転換を図るべきだと思う。』
過去の
経済政策を考える時、「小泉・竹中改革は日本をダメにした」という指摘も多く見られますが、やはり労働者派遣法の改悪は致命的で、日本の集団パワーそのものを崩壊させる爆弾とも言えるものだったと思います。
竹中氏が鼻高々に「トリクルダウン」を口にしていましたが、大企業の内部留保金額を見るにつけ、全くの嘘っぱちだったことが分かります。
今回の記事でも指摘されていますが、イノベーション(技術革新)を推進するのは安定した旺盛な消費力です。
たとえば
家電などで新しい便利な商品が生み出されると、次々と買い替えたい気持は多くの人が持っていると思われますが、そうならないのは生活に余裕がないからで、その理由は不安定な生活を送っているからということになるのではないでしょうか。
大企業は目先の利益に群がり本来の経済発展そのものへの考察を忘れているかのようです。
生産力は
消費力によってのみ高められるもので、その意味では企業の利益は間接的に消費力の向上に充てられてこそ、その時の生産力を完全燃焼させ得るものと思われます。
利益が消費力の向上に用いられなければ、その時の生産物は売れ残り、生産力は停滞ないしは低下を余儀なくされます。
つまり
利益を恒常的なものと考え内部留保すれば、消費者の持つ生産物が完全に消費されるまでは生産が抑制される可能性が高く、他に生産の盛んな国外の企業があれば、その生産性の高さが相対的に価格を押し下げますので、結局は消費者の購買先を奪われて、いわゆる先を越される結果になるものと思われます。
結局、利益というものは次の消費力に当てられるまでの一時的な形態と考えれば分かりやすく、つまりはその先に待っている生産力(生産性)向上への燃料とも言えるのではないでしょうか。
そして
生産性の高さこそが企業の強さで、更にその先へと続ける原動力になるものと思われます。
「アメリカン・ドリーム」と言う言葉がありますが、何かの本を読んで思ったことは「才能を応援してくれる人が居る」ことへの驚きでした。
絵の上手い人が居たら「何枚でも買ってやるから持ってこい」という人が居て、その人によって才能が開花していく様子を見ると、やはりその心の大きさに感動を覚えました。
日本の大企業はどうでしょうか。
下請け、孫請という仕組みを利用して、高い紹介手数料を手にして自らは何もしない、あるいは低価格で使い続けるということが蔓延しており、素晴らしい技術を持っている会社をどんどん取り立てて大きくしていくという姿勢はほとんど見られません。
つまり素晴らしい技術を持っている下請けを大きくすると、自分が利用する際に価格を値切れないということもあり、なるべく下請けは同じレベルに置いておいて、長年安価で利用し続けたいという思いが強いようです。
「ジャパニーズ・ドリーム」があちこちで目につく時が、日本の大企業の進化の時ということになるのでしょうか。