iPS細胞の大量培養が可能に

健康寿命を伸ばす希望の星ともいえるips細胞ですが、この大量培養のための技術が開発されたそうです。

『カネカ、ヒトiPS細胞の大量培養の新技術を開発 』

株式会社カネカ(本社:大阪市、社長:角倉 護、以下、カネカ)は国立大学法人東京大学(東京都文京区、以下、東京大学)酒井康行教授と共同で、ヒトiPS細胞を浮遊培養(*1)で大量に培養する新技術を開発しました。

今回の成果は、世界で初めてヒトiPS細胞を適度な大きさの凝集塊に抑制する脂質類(*2)を発見したことにより、iPS細胞を容易に大量培養することを可能にしました。本技術では10億個以上のヒトiPS細胞を培養することに成功し、ヒトiPS細胞を用いた再生医療の実現に向けて大きく前進させる成果と考えられます。なお、この成果は3月7日より仙台で開催された第16回日本再生医療学会総会で発表しました。

 *1 浮遊培養:液体の培地中で細胞を浮遊させながら培養する方法。大量に細胞を培養するのに適している。

 *2 リン脂質の一種である、リゾホスファチジン酸およびスフィンゴシン-1-リン酸。
【日本経済新聞 配信】

ヒトiPS細胞の培養には、

いろいろ難しい課題があるようです。たとえば「単細胞状態では増殖させることができない」、「かき混ぜる速度が速いと細胞が死んだり、大きくなり過ぎて増殖できなくなる」、などの課題が指摘されています。

今回の新技術は、ヒトiPS細胞を適度な大きさの凝集塊に抑制する脂質類を発見したことに基づくもので、これを微量添加し、単細胞状態のヒトiPS細胞を穏やかに揺らしながら培養するだけで、適度な大きさの凝集塊ができるようになった、とのことです。

この結果、従来の平面培養に比べて、コストは約1/3に、作業時間は約1/10に削減できるようになった、といわれています。

2015年における日本人の平均寿命は、

男性が80.79歳 、女性が87.05歳で、2014年と比較すると、男性は0.29年、女性は0.22年上回った、というデータが公表されています。

しかし、いわゆる健康寿命は男性が71.1歳、女性が75.5歳といわれており、約10年くらいは自立して過ごすことができない状況にある、ともいえます。

加齢と共に、日増しに不自由な生活へと推移していく現状を変えるには、体の不備を解消する医療技術の発展を待つよりありませんが、応用範囲が広いという点で遥かに優る、ヒトips細胞による技術は、その中でも最も期待できる医療技術の一つだと思います。

今回の新技術の開発は、

そのヒトips細胞による技術全体を押し上げる効果があり、今後の応用範囲の拡大化、早期化に、大いに貢献してくれるものと期待しています。

不自由が一つでも解消されれば、辛い老後も楽しいものに変わります。その意味でも、この分野の急速な発展を、心から祈りたいと思います。