日本の自動車メーカーが恐れる悪夢

トランプ氏のつぶやきには、大きな影響力があるようです。

【日本の自動車メーカーがメキシコ問題より恐れる悪夢の再来とは?】

トヨタのメキシコ新工場計画が”ツイッター攻撃”の対象となる
年が明けて早1週間以上が経ち、1月20日の就任式後から本格始動する米国のトランプ新政権への注目度が急速に高まってきました。しかし、日本の経済界にとっては、その注目度は「期待」というよりも「懸念」の色合いがますます濃くなっています。

その大きな契機は先週、トヨタ自動車 <7203> がトランプ次期大統領の“ツイッター攻撃”の対象となったことです。
[略]
メキシコ生産車の米国への輸出は拡大の一途
北米自由貿易協定(NAFTA)に反対するトランプ次期大統領は、隣国メキシコからの輸入拡大を公然と批判しているのは周知の通りです。

真っ先にそのターゲットにされたのが自動車産業でした。現在、多くの自動車メーカーがメキシコで生産して米国に輸出する戦略を拡大しています。関税障壁の撤廃を活用し、労務費などコストの安いメキシコで生産を拡大するのは、至極当然の企業戦略です。

フォードはメキシコ工場新設を撤回、新政権への擦り寄りも出始める
トランプ氏は、まず米国企業であるGMとフォードのメキシコ事業を批判しました。その結果、フォードはメキシコでの工場新設計画を撤回し、トランプ氏に迎合する姿勢を明確にしました。
(投信1 配信)

もうすぐ大統領となる人が、

ツイッターで恫喝ともとれる発言を続けていることには、まったく驚くばかりです。

「アメリカの政治制度は、大統領の意思がただちに政策に反映されるようにはなっていない」という、専門家の指摘がありながらも、これほどまでに大企業の方針に影響を与えたことには、別の意味で驚かされました。

まだ就任もしていない前から、「自分の会社がアメリカにどれだけ投資しており、また今後どれだけ投資する予定か」ということを、公表する企業の代表の姿を見ると、トランプ氏の恫喝の威力が、いかに大きいものなのかが分かります。

現在、企業活動に関しては、

大きく二つの問題点があります。一つはグローバル化の問題で、もう一つは派遣労働者の問題です。

グローバル化の問題というのは、「人件費の安い外国で生産して、資金のある外国で販売する」ということに象徴されますが、そういうやり方によって、自国の国民が生産にも消費にも、積極的に参加できない、という事態を生じさせることです。

グローバル化で、安い商品が買えるから良いではないか、という指摘もありますが、その安い商品を買うための資金はどこから得るのか、という現実もあります。

たとえば東南アジアの各国で

生産している工場を、全て日本国内に移すと、どうなるでしょうか。

それまでより人件費が高くなるけど、購買力も高くなります。外国からの安い商品が入らなければ、それで充分回っていくのではないでしょうか。

「外国からの安い商品が入らなければ」という、条件付ですが、その「安い商品ができる」のも、実はグローバル化の結果と考えられます。

つまりグローバル化という

やり方自体が、各国の健全な生産活動を破壊し、それによって健全な消費活動も破壊されていると考えるのが、自然な考え方ではないでしょうか。

「生産は消費のためにある」のであって、自国民が消費できない生産は、自国民にとっては、生産とはいえないものです。

もう一つの派遣労働者の問題

というのは、「非正規雇用を増やす」ということに象徴されますが、そういうやり方によって、国民が安定的な労働環境を得ることができない、という事態を生じさせることです。

元々、企業が人を育てて、自社の戦力を確保するということが、企業の根本的な活動としてありましたが、いつの間にか、企業が人を育てることを止めて、派遣会社から調達するようになってしまいました。

その結果、国民は不安定な労働環境を余儀なくされ、同時に不安定な消費者に変わっています。

企業が人を育てなくても、

ある程度やっていけるようになったのは、コンピュータシステムなどの普及により、個人の価値が相対的に低下したということがあると思いますが、逆にいえば、企業が人を育てて、より強力なコンピュータシステムの構築などに関与させれば、さらなる企業の発展につながるものと思われます。

企業のグローバル化も、派遣労働者の活用も、国民の生産者としての地位を低下させると同時に、消費者としての地位も低下させます。

「生産は消費のためにある」のであって、また「消費者としての地位は、生産者の地位と連動している」ことを思えば、企業のやるべきことは、健全な生産者をできる限り多く、生み出すことに尽きると思います。

その意味では、

アメリカの次期大統領であるトランプ氏は、自国の繁栄だけを願う政策を推し進めるのではなく、各国が、自国での生産を促すような、そのような国際的な協調政策を推し進めるべきだと思います。

たった数%の莫大な資産を持つ大富豪の存在や、いきすぎた経済のグローバル化や、派遣労働者制度は、資本主義経済の負の側面であり、それによって消費力は衰退し、その結果、生産そのものが、無意味になる日がくるでしょう。

自由である故に、愚かな選択がなされ、その結果、多くの不幸がもたらされることは、ある意味、仕方のないことかも知れませんが、それに気付いた時は、潔く舵を切ることも、また自由であることを、今回、強く意識させられました。